奥歯のあたりがズキズキと痛む、冷たいもの・熱いものを食べるとキーンと奥歯がしみる、治療した奥歯がまた痛むなど、奥歯のストレスの原因と解消する方法を解説します。
【監修】
歯科医師 菊地由利佳
【所属】
健康検定協会
【記事読者へのメッセージ】
歯は健康に欠くことのできないものです。美味しいものを食べる、会話をする、美しい表情を保つ、これらは健康な歯があってからこそできること。記事をご一読いただき、ぜひ歯の正しい知識を知って、より健康な毎日をお過ごしください。
新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けた政府の発表を受け、一部の医院において臨時休診または診療時間の変更が生じております。政府から発表される情報等により、急な変更も予測されますため、受診の際には事前に医院にご連絡いただくなど、ご確認をお願いいたします。
Contents
1.突然起こる奥歯の激痛!歯の痛みにガマンはNG!
1-1.奥歯の痛み・悩みをチェックしよう
奥歯の痛みは、本当につらいものです。 痛みで集中力が続かない、なかなか眠れない、食事が楽しくない等々、日常生活に悪影響が出てきます。それでも忙しいし、お金がかかるし、痛い目に遭うし…と歯医者さんに足が向かないひともいるかもしれません。
奥歯の痛みについて、次のような悩みを感じていませんか?
歯の痛みをガマンしてはいけません。 奥歯の痛みには原因があり、原因を解消しない限り、歯の痛みはいつまでも続きます。ガマンをせずに歯医者さんへ相談してください。
2.奥歯が痛い!しみる!原因は虫歯だけじゃない
2-1.磨きにくい奥歯は虫歯になりやすい
奥歯が痛む原因は、多くが虫歯によるものです。 奥歯のかみ合わせ面には溝があり、食べ物のかすがたまりやすくなっています。しかも奥歯は、歯ブラシが届きにくく、みがき残しが起こりやすくなっています。奥歯は、虫歯になりやすい歯なのです。
歯はおおまかに、エナメル質、象牙質、歯髄という順の3層構造になっています。 エナメル質は、歯の表面にある半透明の層で、非常に固くなっています。エナメル質の内側にあるのが象牙質で、やわらかく弾力性があります。歯髄は象牙質の内側にあって、神経や血管などが集まっている部分です。一般的には神経と呼ばれていて「歯の神経を抜く」というときは、この歯髄を取り除くことを指します。
象牙質や歯髄にまで虫歯が侵食しているときに、歯が痛みます。虫歯の段階は、次のCO、C1~C4で表します。
■虫歯の段階と特徴
虫歯の段階 | 特徴 |
---|---|
CO※ | かみ合わせの溝に茶色っぽい色がついている。歯の表面が白く濁っている。虫歯になりかけている。 |
C1 | エナメル質にできた虫歯。痛みを感じない。 |
C2 | 象牙質にまで虫歯が達している。やや痛みを感じる。 |
C3 | 虫歯が歯髄に達している状態。ズキズキと激しい痛みがある。 |
C4 | 歯の根だけが残っている。歯髄が死んでいるので痛みはない。 |
痛みを感じた時点で、すでにC2の段階にまで進んでいるので、治療を先延ばしにしないほうがいいでしょう。
また、過去に治療した歯が痛むことがあります。原因は、つめ物・かぶせ物の周辺や下で虫歯が進行しているためで「二次カリエス(二次う蝕)」といいます。虫歯がつめ物・かぶせ物に隠れて見えないので、歯医者さんの診察が必要です。
2-2.奥歯の奥が痛い!親知らずが原因かも?
奥歯の奥の歯茎に痛みを感じるときは、生えかけの親知らずが原因の可能性があります。
親知らずは18~30頃歳に生え始める歯で、口のいちばん奥に生えます。第3大臼歯または智歯(ちし)ともいいます。まっすぐ上に向かって生えないことがあり、斜めに生えたり生えてこなかったりすることも珍しくありません。
生えかけの親知らずは、歯の周囲に歯茎が被さっているので歯茎のポケットができやすくなります。このポケットに食べ物のかすがたまったりすることで、細菌増殖して、歯茎が炎症を起こすことがあります。これが「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」です。
智歯周囲炎は、症状が進行していくと、歯茎以外の場所へも炎症が広がっていきます。
2-3.「歯がしみる」は危険!? 神経に問題があるかも
冷たいものを食べたり、飲んだりすると、歯がしみることがあります。
歯をぶつけたり、虫歯治療で削った直後など歯に刺激を受けた後に一時的に冷たいものでしみたりすることがあります。これは歯髄に血液がたくさん集まっている状態で歯髄充血といいます。 一時的なもので、30秒程度で収まります。
細菌が歯髄に入って炎症を起こしている場合は、歯髄炎といいます。多くは放置した虫歯が悪化して、菌が歯髄に侵入して起こります。これは放置していると悪化していく一方です。悪化すると、冷たいものだけでなく、熱いものでも歯がしみるようになります。
2-4.肩こりで歯が痛くなる!?
歯とは関係のない部分が原因となって、歯に痛みを感じることがあります。こういった歯の痛みを「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」といいます。筋・筋膜性歯痛は、非歯原性歯痛の中でも、筋肉の疲労が歯痛となって現れるものをいいます。
筋肉に慢性的な負担がかかると、疲労によって筋肉にトリガーポイントというしこりができます。このトリガーポイントが刺激されると、主に奥歯のあたりににぶい痛みを感じます。
筋・筋膜性歯痛は、主にあごの筋肉が原因となって起こりますが、首や肩の筋肉がトリガーポイントとなることがあります。肩こりが歯の痛みとなって、現れることもあるのです。 あごや肩などのしこりを押したときに歯が痛むときは、筋・筋膜性歯痛の可能性があります。
こういったときは、マッサージやストレッチで筋肉のこりをほぐすことで、症状を改善できます。また消炎鎮痛剤を処方されることもあります。
3.奥歯の痛みは歯医者さんの治療が必要
3-1.痛い!と思ったら歯医者さんに相談を
痛みを感じた場合、虫歯であれば、すでにC2にまで進行しています。虫歯が象牙質にまで達している場合は、自然と改善することはありません。歯医者さんの治療を受ける必要があります。
象牙質は、エナメル質よりやわらかいため、虫歯に感染すると急速に破壊されていきます。そのため、虫歯に感染している象牙質は削り取ります。もし、虫歯が残ると、再発してしまいます。
削り取ったあとには、すき間ができないようにレジンなどの充填材料を詰めつめ物(インレー)でふたをします。
■白いインレーの費用の目安(1歯)
治療内容 | 費用(自由診療) |
---|---|
セラミックインレー | 40,000~80,000円 |
COは、虫歯が疑われる状態で、ケアの仕方によって歯を再生(再石灰化)することができます。 C1は、エナメル質に虫歯が発生している状態ですが、穴が空いていなければ、治療をせずに経過観察とすることがあります。 ※歯医者さんによって対応が異なります。
3-2.ズキズキ痛むのはかなり悪化しているかも
もし歯がズキズキと痛むようなときは、虫歯がかなり悪化している可能性があります。虫歯が象牙質だけでなく、歯髄にまで達して歯髄炎を起こした、C3の虫歯の可能性があります。
歯髄に虫歯が達してしまったら、細菌に感染してしまった歯髄の除去が必要です。いわゆる「神経を抜く」ことで「根管治療」ともいいます。除去した歯髄はもとには戻りません。治療を行う前に、歯医者さんとよく相談をして決めてください。
歯髄を除去したあとは、充填材料を詰め、かぶせ物(クラウン)などで歯を保護します。ちなみに、すでに歯髄が死んでいるC4でも同じ措置を行えることもありますが抜歯になってしまうケースもあります。
3-3.歯がしみる!知覚過敏だけなら薬で対応可能
虫歯じゃないのに歯がしみるときは、エナメル質に覆われているはずの象牙質が表に出てしまった可能性があります。歯みがきの方法が悪いと、歯の表面が削れて、象牙質があらわになることがあります。
軽症のうちは、歯みがきの方法を変えるだけで改善されます。症状がもう少し重い場合は、薬を塗って刺激が歯髄に届かないようにします。 それでも改善されない場合は、レジンを充填し、表面を覆います。
4.奥歯が痛むときに歯医者さんを選ぶポイント
4-1.自宅や会社からの通いやすさを重視しよう
歯の痛みの程度にもよりますが、多くの場合、通院は1回だけでは終わりません。虫歯の治療であれば、複数回は通うことになります。できるだけ通いやすい歯医者さんを選びましょう。
・家や会社から近い ・診療時間がライフスタイルに合う ・駐車場がある(車通勤の場合)
ひとによって通いやすい歯医者さんのポイントはさまざまです。複数回通うことを想定して、通いやすい歯医者さんをイメージしてみましょう。
4-2.かかりつけにできる歯医者さんを選ぶ
もし、かかりつけにしている歯医者さんがないのであれば、治療のあともお世話になる歯医者さんを探してみましょう。お口のトラブルがあったとき、同じ歯医者さんであれば、以前受けた治療の記録などもあり、スムーズに診察を受けられます。
通いやすさはもちろん、口コミなどの情報を参考にして、相談のしやすさや、居心地のよさなど、さまざまな観点から歯医者さんを選んでみてください。
まとめ
歯が痛いのに、歯医者さんへ行きたくなくて、放置してしまうことがあります。 ところが、虫歯をはじめとする歯の不具合は、風邪などと違って勝手に改善することはまずありません。
歯の痛みは、放置すれば放置しただけ、症状が悪化していきます。また一般的に、歯医者さんへ行くのが早ければ早いほど、治療期間は短くできます。歯に痛みを感じたときは、ガマンをせずに、できるだけ早く歯医者さんに相談しましょう。