歯茎が腫れているときの原因や治療法について解説します。ひとくちに歯茎が腫れたといっても「歯茎が痛い」「歯茎から膿が出ている」「歯茎が赤くなった」など症状はさまざまです。歯茎が腫れている原因を確認して、治療法をチェックしてください。
【監修】
歯科医師 菊地由利佳
【所属】
健康検定協会
【記事読者へのメッセージ】
歯は健康に欠くことのできないものです。美味しいものを食べる、会話をする、美しい表情を保つ、これらは健康な歯があってからこそできること。記事をご一読いただき、ぜひ歯の正しい知識を知って、より健康な毎日をお過ごしください。
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Contents
1.歯茎の腫れをチェック
ふと気づくと、歯茎に腫れを感じることがあります。 舌の先や指で歯茎を触れると、痛かったり、ぶよぶよとやわらかくなっていたりします。また、白くなっていることもあれば、赤く充血していることもあります。
ひとによって症状はさまざまですが、もし次のような症状があるときは、歯医者さんに相談しましょう。
2.歯茎が腫れる原因はなに?
2-1.白い腫れはストレスや疲れが原因
歯茎に白っぽい丸い腫れや傷のようなものがあるときは「アフタ性口内炎」の可能性があります。 原因ははっきりしないのですが、疲労やストレスなどによって起こるとされています。10日ほどで自然と改善します。歯茎だけでなく、唇の裏側、ほおの内側にできることもあります。
何度も繰り返し発症する場合は「再発性アフタ性口内炎」やほかの病気が疑われるので、歯医者さんに相談してください。
■アフタ性口内炎(あふたせいこうないえん)
症状 | 歯茎や唇の裏側、ほおの内側に白っぽい円形の潰瘍ができる。 |
原因 | 疲労やストレス、感染症などよって起こる。 |
治療法 | 10日ほどで自然と改善する。 |
2-2.噛むと歯茎が痛むときは、衝撃と虫歯が原因
噛みしめたときに歯が痛む場合は「根尖性歯周炎」を起こしている可能性があります。 根尖性歯周炎は、歯の根っこ(根尖)で炎症が起こっている状態です。歯に強い衝撃がかかったり、虫歯が進んで歯の根にまで細菌が達していたりすると発症します。
根尖性歯周炎を治療せずに放置すると、歯の根っこに嚢胞(のうほう)という膿がたまった袋状のものができます。この状態を歯根嚢胞といい、歯の根っこ部分の歯茎が腫れます。症状によっては、抜歯が必要になることもあります。
■根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
症状 | 歯の根っこ(根尖)で炎症が起こり、歯を噛みしめると痛みを感じる。 |
原因 | 歯に強い衝撃がかかる。または虫歯の細菌が歯の根っこ部分に感染する。 |
治療法 | 根尖の膿を取り除き、抗菌薬などで細菌の繁殖や炎症を抑える根管治療を行う。 |
■歯根嚢胞(しこんのうほう)
症状 | 自覚症状はあまりない。嚢胞(のうほう)(※)が大きくなると、噛んだときに不快感や痛みがある。 |
原因 | 根尖性歯周炎が慢性化して、膿のたまった嚢胞が歯の根っこにできる。 |
治療法 | 根管治療、または歯茎を切開して嚢胞を取り除く。場合によっては抜歯をする。 |
2-3.血や膿が出る原因の多くは歯周病
歯茎が赤く腫れた状態を歯肉炎といいます。歯茎が腫れているので、歯と歯の間の歯茎がやや丸みを帯びた状態になります。歯肉炎の状態で歯をみがくと、歯茎から血が出ます。 歯みがきで、すみずみまでみがけていないと、歯に歯垢が残り、やがて歯石になります。この残った歯垢や歯石の細菌によって歯茎が炎症を起こし、歯肉炎となります。
歯肉炎を放置すると、やがて歯周炎を発症します。歯周炎とは、歯肉炎を起こしていた細菌が、歯茎の奥にまで入り込んで炎症を起こしている状態です。歯茎に触るとぶよぶよして、押すと白い膿が出るようになります。また、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶けて、歯がぐらぐらとします。
歯肉炎と歯周炎は、ひとまとめにして歯周病といいます。症状がひどくなるにつれて、口臭がひどくなっていきます。歯茎の腫れの多くは、歯周病が原因です。
■歯肉炎(しにくえん)
症状 | 歯茎が赤く腫れる。歯みがきなどをすると出血する。 |
原因 | 歯垢や歯石の細菌によって歯茎が炎症を起こす。 |
治療法 | 歯垢や歯石を除去する。 |
■歯周炎(ししゅうえん)
症状 | 歯茎が後退する。ぶよぶよする。血や膿が出る。歯がぐらぐらする。口臭がある。 |
原因 | 歯肉炎が進行して、歯を支える歯槽骨や歯の根にある歯根膜などで炎症が起こる。 |
治療法 | 歯茎を切開するなどして、歯と歯茎の間にたまった歯石などを取り除く。 |
3.歯茎が腫れたときの対処法
3.症状が軽い歯肉炎なら歯垢と歯石を取るだけ
歯茎が赤く腫れているだけの歯肉炎であれば、ほとんどのひとは歯医者さんで歯垢と歯石を取ってもらうことで症状を改善できます。 歯茎の腫れは、この段階で抑えましょう。歯垢や歯石を放置していると、歯周病が悪化する原因になります。
歯石は、唾液の成分が歯垢と結びついて石灰化したものです。歯石は、歯みがきで落とすことができません。歯医者さんが、スケーラーという器具を使って、歯と歯茎の間にできた歯石を削り取ります。
症状がもう少し重い場合は、歯茎の奥にある歯石の残りや、有害な物質の除去と歯の根っこの表面をつるつるにする措置を行います(SRPといいます)。
3-2.歯周病が悪化すると手術が必要になることも
歯周病が悪化した場合は、外科的治療(手術)を行います。症状の重さなどの条件によって、行う治療は異なります。
・組織付着療法 歯茎を切開したり、歯からはがしたりして、歯と歯茎の間にたまった有害な物質を取り除きます。有害な物質を取り除いたら、歯茎が歯に再び付着する措置を行います。
・切除療法 歯周ポケット(※)の底から上まで歯茎を切り取り、歯についた歯石や有害な物質を取り除きます。治療を終えたあと、歯茎がもとの状態より後退することがあります。 (※歯周ポケット…歯と歯茎の間にできるすき間。歯垢や歯石がたまると歯周ポケットが深くなり、歯茎の奥まで細菌が入り込む原因になります。)
そのほかにも、歯周病で失われた組織を再生する治療なども行われています。ただ、歯を支える歯槽骨がほとんど破壊されてしまっているような、ひどく悪化した歯周病の場合は、抜歯することになります。
3-3.歯周病は再発しやすいので定期検診が必要
歯周病は治療を終えても、再発することがよくあります。再び歯石がたまって歯茎の腫れが起こらないように、定期的に歯医者さんに通って、クリーニングを受けましょう。
もし歯周病が再発していたとしても、症状が軽いうちに見つけられるので、外科的な治療を受けずにすみます。歯医者さんによっては、歯みがきの方法も指導してくれます。定期検診は、1年に3~4回くらいが目安です。
4.歯茎が腫れたときに歯医者さんを選ぶポイント
4-1.歯医者さんの通いやすさは重要なポイント
歯茎の腫れを治療することは大事ですが、もっとも大事なのは治療してからです。 治療を終えてからも、定期検診で歯医者さんへ通院することを考えると、通いやすい場所にあることが重要です。 仕事帰りに通うのであれば「通勤経路」にあって「夜間診療に対応」している歯医者さんがいいでしょう。休日に受診したい場合は「土曜日・日曜日診療」はもちろん「自宅から近い」のも大切です。
4-2.相談しやすいかかりつけの歯医者さんをつくる
ちょっとしたお口の異変も気軽に相談できる、かかりつけの歯医者さんを見つけましょう。 相談しやすい雰囲気、説明のわかりやすさ、自分との相性など、これからも付き合っていけると感じた歯医者さんに定期検診をお願いして、こまめにお口をチェックしてもらいましょう。 歯医者さんの口コミなども参考になります。
5.まとめ
歯茎が腫れる原因には、さまざまなものがあります。 深刻な病気が歯茎の腫れる原因になっていることがあるので、面倒だからと放置するのは危険です。手術が必要になることもあるので、早めに歯医者さんへ相談しましょう。 歯茎が腫れる原因の多くは、歯周病です。歯周病を防ぐには、ていねいな歯みがきが大切です。面倒でもしっかりと歯をみがいて、歯垢がたまらないようにしてください。